■Time Machine 1977-1986 第3回 1977年3月
77年3月15日、ザ・バンドの7枚目のスタジオ・アルバムにして、オリジナル・メンバーによるラスト・アルバムとなる『アイランド(Islands)』(Capitol / SO 11602)がリリースされた。ザ・バンドは、前76年11月25日に、長年にわたるツアー生活に疲れたロビー・ロバートソンが主導でライヴ活動を終了することを決定し、ザ・バンドとしての最終公演となる“ラスト・ワルツ”と題した公演を行っていた。つまりその後ザ・バンドは、すでに解散状態にあったはずだったが、この時点では公式には解散は発表されていなかった。そのため解散しているか、していないか分からない状況の中でリリースされた『アイランド』は、純粋なニュー・アルバムとして一般的には受け入れられた。実際には、前年に行ったラスト・ライヴを収めた映画『ザ・ラスト・ワルツ』を公開し、そのサウンドトラックとして同名アルバムをワーナー・ブラザーズが発表する予定であったため、キャピトルとの契約で残っていたアルバム一枚の契約を満了する目的でリリースされたものだった。その音源のほとんどは、前作『南十字星(Northern Lights – Southern Cross)』(75年11月)のレコーディング後に同作と同じシャングリラ・スタジオで断続的に行っていたセッションから制作されている。ロビー・ロバートソンがのちに同作がCD化された際のライナーで、ザ・フーの『オッズ&ソッズ』を引き合いに出しているように未発表曲集とも言える一枚だった。そのせいもあって、リリース時にもその後も厳しい評価が多いアルバムで、実際、新曲、カヴァー、インストゥルメンタルとよく言えばヴァラエティがあり、悪く言えば統一感のない内容となっている。とはいえ、特に収録には賛否もあった前年のカーター大統領の選挙戦の応援歌としてレコーディングされたレイ・チャールズのヴァージョンで知られる「わが心のジョージア」、またサム&デイヴで知られるホーマー・バンクスの楽曲「胸にあふれる想い(Ain’t That A Lot Of Love)」の二つのカヴァー曲でのリチャード・マニュエルとレヴォン・ヘルムの泥臭さと哀愁漂う歌声には、ザ・バンドらしさが凝縮されていて、この2曲を聴くだけでもこのアルバムの価値はあるのではないかと感じる。
77年のこの月にはその他、クラフトワークと同じクラウトロックを代表するグループ、カンの8枚目のアルバム『ソウ・ディライト(Saw Delight)』(Harvest / 1C 064-32 156)がリリースされている。ジャマイカ出身のベーシスト、ロスコ・ジーとガーナ出身のパーカッショニスト、リーバップ・クワク・バーを新たに迎えて制作されたアルバムは、アフロ・ロック・テイストが感じられる内容となっている。
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